試作工作室/改造工房(2006年12月02日更新)
バイク(Bandit250、GJ74A)ヘッドライトのHID化
バイクのヘッドライトを、ノーマルのハロゲンバルブからHIDに換装してみました。
と言っても、作業自体はバイク屋にお任せしてしまいましたが(汗)
●HIDとは?
ここで言うHIDは、PCのUSBで言うところのHuman Interface Deviceの略の事…
ではありません(ぉ
High-intensity discharge lamp、高圧放電灯の事です。略し方を変えてディスチャージランプという
言い方もするようですが、ここではHIDと呼ぶ事にします。
HID発光原理は水銀灯などと同じで、発光管の両極に電極があり、その間で放電させ、電極から放出
された電子が対極に移動する途中で、管内に封入された水銀原子に当たる事で、水銀原子が光を
放出します。この方式はフィラメントより発光効率が良い為、車やバイクのヘッドライトではハロゲンで
定格55Wのところ、HIDでは定格35Wと低く設定されているにもかかわらずハロゲンより明るくなります。
車やバイクのHIDでは、HIDバルブ(バーナーとも言います)に印加する電圧は矩形波85V、数100Hz
となっています。この電圧をバッテリー電源DC12Vから生成するインバータが必要になります。
また、発光開始時はバーナー電極間を絶縁破壊して放電開始しなければならない為、上記電圧より
も高い電圧を印加する必要があります。これを担う回路の事をイグナイタと言います。
※エンジン点火制御装置もイグナイタって言いますネ。
但し、単に放電開始に必要な電圧だけの印加だと、水銀灯と同じく、安定発光までに相当な時間を
要してしまいます。その為、車やバイクで使われるイグナイタでは、20kV以上の高電圧を印加し、
即座に発光させます。この制御のことを、光束立上促進制御、と言うようです。
これでも、安定までには数秒を要します。
以上の、インバータとイグナイタを合わせて、バラストと言います。
HIDを後付導入する際は、バルブをハロゲンからバーナーに換えるだけでなく、バラストを追加する
必要がある、という事です。
※バルブソケットも、上記のように高電圧が印加されるので流用できず、交換する必要があります。
バラストは、メーカーにより、インバータとイグナイタが別々のものと、一体構造になっているものが
あります。また、後付HIDではバーナーは単体でなく、ソケット・ハーネスがセットになっています。
●H4バルブについて
Bandit250(GJ74A)のヘッドライトはH4バルブです。このバルブは、一灯でHi・Loを切り替える為、
バルブ内に2個のフィラメントが入っています。フィラメントの位置関係はこんな感じ。
では、HIDではどうか、というと…現時点では、このように電極が2組あるようなものは殆ど無いようです。
理由は上記の通り、発光立上がりが遅いから。パッシングに支障が出だり、切替時に一瞬消灯したり
して危険なのです。
では、どう解決してるのかと言うと…
上の写真を見て頂いて分かる通り、各々のフィラメントは前後方向でだいたい一直線上にあります。
これと発光点がほぼ同じになるように、何とバーナーそのものをソレノイドを使って移動させています!!
大胆なことをしてくれますねぇ(^^;
この構造の為、パッシング等は連続何回以上やるな、とか制限があります。(ソレノイドが過熱する為)
従って、H4相当のバーナーは、ソケット後方にソレノイドが仕込まれており、一般のH4バルブソケットよりも
かなり後方に場所を取られる、という事です。
このせいで、Bandit250のヘッドライトには大きな追加工が施される事に…(>_<)
尚、ソレノイドを制御する為のローハイ切替ユニットは、バーナーとセットになってる事が多いようです。
以上より、H4バルブ代替HIDを配線図にすると以下のようになります。(これは一例です)
●色温度について
バーナーには色温度というものがあり選べるのですが、意味はPCのディスプレイと同じです。
色温度が高いほど青っぽく、低いほど赤っぽくなります。中間は白くなります。
色温度を上げて青くしてしまうと、雨や雪のような悪天候の時の視認性が悪くなってしまいます。
ノーマルハロゲンは3200Kで割と黄色っぽいのですが、HIDでは白っぽくしたかったので、4600Kを
選択しました。
●Bandit250(GJ74A)にHIDシステムを搭載する
今回採用したHIDシステムは、PIAAのMH11B+MH16(MH6)というものです。
価格や型式の詳細は、一番最後に記載しましたので参照願います。
尚、Bandit250を知らない方の為に…
このバイクは、カウルで覆われていないネイキッドというタイプですので、インバータ、イグナイタ、
ローハイ切替ユニットを収納できる場所が殆どありません。どこに装着してあるかというと…
タンデムシートを外した状態です。
中央のデカいユニットは、元々付いていたエンジン制御用のイグナイタです。
その右下にHIDのインバータが、ローハイ切替ユニットが右上に取り付けられています。
ここは、もともと工具が入っていたんですが…工具が追い出されてしまいました…
工具の置き場所は、新たにメインシート下辺りに確保するしか無さそうですね。
持ち歩くのはメンドイので(^^;
HIDが出始めの頃のバラストは、上記写真のエンジン用イグナイタの倍以上の大きさがあったようですが、
インバータだけにしても随分小さくなったもんです。発熱大丈夫かな…ちょっと心配。
HID用イグナイタは、ヘッドライトの直ぐ後ろに取り付けられていました。「PIAA」と書いてある奴です。
防水処理されているそうなので、このように剥き出しで取り付けても大丈夫との事。
20kVもの高電圧を発生させるユニットなので、イグナイタ・バーナー間の配線をあまり長く引き回せ
ない、という事なんでしょうね。
先ほどのインバータからイグナイタまでは、1mの専用延長ケーブルで引き回しています。
この区間は矩形波85V…電磁波をまき散らしてるんじゃないか?等と、要らん心配をしてしまいます(ぉ
イグナイタ取付で結構厚い鉄板に穴を開けてるので、自力でやる場合は加工が大変かも知れません。
ヘッドライトを外した状態です。各種中継コネクタが密集してますね(^^;
丸で囲った部分が、HIDバーナー後方のソレノイドです。結構な長さがあります。
このままではヘッドライトカバーに当たってしまいます。ので、この部分を飛び出させるようにカバーに
巨大な穴が開けられていました!(矢印部)
こんな加工、自力でやるのは…少なくとも自分は無理です!(>_<)
ヘッドライトカバーを後ろから見るとこんな感じ。矢印部がソレノイドです…
見事に出っ張ってます!(>_<)
●どんだけ明るくなったのかと
こういう記事では、交換前後でどの位明るくなった、とか、比較写真を載せるのが普通ですが…
換装前の写真をウッカリ撮り忘れたので比較が出来ません!(爆)
というワケで、自分の実感としては物凄く明るくなった!という印象なのですが、全然伝わらないですね(汗)
大変失礼致しました!m(_ _)m
これではあんまりなので(汗)、HID化した後の写真だけでも載せておきます。
ロービーム時
ハイビーム時
●参考:HID化に要した費用
PIAA H.I.D H4(HS1)切替 バルブ(4600K)&ハーネスSET 型式MH11B \31,500
PIAA H.I.D バイク用バラストイグナイターSET タイプ2 型式MH16 \23,100
PIAA H.I.D 延長コード1000mm(バラスト・タイプ2専用) 型式MPH16 \3,150
工賃 \15,750
以上は、2006年11月の時点で、南海部品にて購入し作業して頂いた価格です。