X68k電源強化計画−ATX電源を「安全に」接続する(2006年9月9日更新)

…それは、妄想から始まった(ぉ…


X68kの電源強化を妄想する(2006/06/24 初UP)

X68kの電源容量が足りない!パワーアップしたい!と思った事は無いだろうか。
少なくとも、当方は容量アップしておきたい。

なので、X68kの電源ユニットの出力を強化する方法を妄想してみる。
尚、これはあくまで妄想ではあるが、要望が多ければ製品化しないでもない(ぉ

●まずは純正電源ユニットの各電流定格を知る

…と言っても、どこかに書いてあるわけではない。電源回路の使用部品から推定してみる。

出力電圧

定格電流推定部品 部品定格 推定定格 推定電力
+5V FMB-33S
(ショットキダイオード)
VF=12A(6A×2) +5V±5%?
12A
60W
+12V SI-3122V
(3端子レギュレータ)
+12±0.2V
2A
+12±0.2V
2A
24W
−12V 78M12
(3端子レギュレータ)
+12V±5%
500mA
−12V±5%
500mA
6W
+5V
(Vcc2,待機電源)
78M05
(3端子レギュレータ)
+5V±5%
500mA
+5V±5%
500mA
2.5W

推定電力の合計、92.5W。SUPERの取説だと最大99Wだから、そんなに外れた推定でもなさそうである。

●どうやって強化する?

理想は、純正の電源基板の大きさで電源を再設計し、乗せ替えること。
予想される問題点としては、電流増加に伴いトランス等の各部品サイズが大きくなるので、 純正の大きさの
ままでは入りきらない可能性がある事か。
まぁこれは、 そもそも当方がスイッチング電源を設計できないので神速で却下(ぉ

ならば、かつて満開製作所で販売されていた「ATX電源接続キット(MK-CC011)」のように、市販の
ATX電源を繋げらるようにしてしまう方法がある。回路的には、ON/OFFコントロールの論理がx68kとは
逆なので、74LS04等の論理反転回路を付けるだけ、と至って簡単である。
この方法の問題点は、ATX電源そのものは大き過ぎて内蔵できず、電源の置き場に困る事であろう。

●ACアダプタ方式のATX電源はどうか

DOS/V機では、静音化の流れの中でATX電源をACアダプタで供給するメーカが出てきた。
ACアダプタで一旦低電圧DCに落とし、PC筐体内でDC-DCコンバータ基板でATXの各電圧を作り出す、
というものである。主な発熱部を筐体の外に出す事で、電源をファンレスにして静音化を図る。
電圧を2段階変換しているので価格はかなり高価になってしまうが、止むを得ないところか。

これなら、DC-DCコンバータとATX-X68k変換基板を作って内蔵できるかも知れない。
ACアダプタは邪魔かも知れないが、通常のATX電源ユニットに比べれば小型だし支障は無いであろう。

これは良い方法のように思えるが、問題は今まで50W〜60Wとか小型のものしか無かったこと。
最近になって何と180W等という大容量のものが出始めた。ダイヤテック製、PLS180である。
この製品、ACアダプタをタンデム(2台)接続して合計360W出力可能!って、なんか凄いですな。

これに使用されているACアダプタは、DC19V、9.5A出力。これを必要な電圧に下げるようなDC-DC
コンバータを設計すれば良い…が…DCジャックの形状が特殊ですな。中国メーカかよorz
個人での入手は難しそうなので、DC-DCコンバータそのものを設計する事は早々に諦める(ぉ

で、PLS180のDC-DCコンバータPCBモジュールをそのまま内蔵する事にする。
まずはDC-DCコンバータ部の各電圧の電流定格を確認しておく。

出力電圧 電圧公差※ 定格電流
+5V +5V±5% 20A
+12V +12V±5% 12A
−12V −12V±10% 0.5A
+5VSB(待機電源) +5V±5% 4A
+3.3V +3.3V±5% 20A

※電圧公差はATX電源仕様による。PLS180の製品には公差の記載は無い。

定格電流は各電圧毎に独立したDC-DCコンバータの各々の出力能力を示している。全部同時に
出力できるワケではなく、総合電力はACアダプタの能力により制限される。
ATX12V電源仕様に準拠しているらしく-5Vは無いが、X68kでも使わない ので問題は無い。

上記のX68k電源定格と比較しても、充分過ぎるくらい容量に余裕がある。+12Vと−12Vの
電圧公差がX68kの電源仕様からは外れているが、スイッチングトランス方式と違い個別DC-DC
コンバータという方式を考えると、そんなに外れないのでは?と推測。

参考までに採用されている電源制御ICを調べてみたが、制御精度は±1.5%とか±1%であり
割と精度は良いのではなかろうか。

以上から、通常動作における電源接続自体には問題なさそうである。

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ここで、「通常」とわざわざ断ったのにはワケがある。通常でない状態…即ち、「異常時」について
全く考察していない。具体的には、メイン回路ショート等である。

メイン基板等のコンデンサリフレッシュを自前でされた方が、「電源ユニットからジージー音がして
動作が不安定」という症状を訴える例を聞いたことがある。これは+5V等が半ショートして、電源
ユニットの保護回路が作動し続けている状態に他ならない。
※このような状態が確認された場合は、出来るだけ速やかに電源を切ること。

このように、中途半端に電源ラインがショートされた場合、X68kの電源ユニットならばそれなりの
リミッターが働き保護するが、ATX電源では、そのあり余るパワーの為にリミッターが働かず、
半ショート箇所や経路の弱い所が過熱して焼損するかも知れない。火災を誘発するかも知れず
大変危険である。また、貴重なX68kが、このような形で失われるのは大変忍びない。

以上より、もしATX電源変換基板を製品化するなら、変換基板内に保護回路を設けるべきである。
また、接続するATX電源は、なるべく純正に近い容量を選択し、強化分は必要最小限に留める
べきである。「大は小を兼ねる」ということわざは、電源ユニットには適用しないほうがよい。
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●変わったATX電源

ちょっと電源強化の本題から外れてみる。(ぉ

「車載PC」というのを御存知だろうか。その名の通り、車に搭載するPCである。主な用途は
カーナビであろうか。車のバッテリーを電源として動作している。

ここで、大概の方は「バッテリー(DC12V)→AC100Vインバータ→通常のATX電源」という風に
電圧変換して動かしている、という想像をされると思う。

ところが、車載PCではバッテリーの電圧を直接、昇降圧DC-DCコンバータに突っ込んでATX
の各電圧を生成している。DC-ACインバータを使わなくて済み、効率が良い。

このDC-DCコンバータも、以前は90Wという微妙なものしか無かったのだが、最近になって、
ようやく160Wのものが出現した。Mini-BOX(ituner)製、M2-ATXである。

これをX68kに繋いだら面白そう…いや、X68kを車載しよう!ていう事ではなく、何かのイベント
等で電源確保に困っても、車のバッテリーさえあれば動かせる…ただそれだけである(ぉ

M2-ATXについても、各電源定格を確認しておく。
ちなみに、入力電圧範囲はDC6V〜24V(11V以下は出力停止)である。

出力電圧

電圧公差

定格電流

短時間ピーク電流
(<60秒)

+5V +5V±1.5% 8A 12A
+12V +12V±2% 8A 9A
−12V −12V±5% 0.15A 0.2A
+5VSB(待機電源) +5V±1.5% 1.5A 2A
+3.3V +3.3V±1.5% 8A 12A

+5Vの容量が少々足りない。短時間ピーク電流でカバーできるか?
+12Vの電圧公差が微妙に外れているが、まぁ実害は無いであろう。
−12Vが絶望的に足りない。動くのだろうか?
…これは試してみるしかなさそう。

●PLS180、X68kに内蔵できるか?

PLS180のDC-DCコンバータ、かなりコンパクトにまとまっている。幅58×高さ22×奥行140 mm。
なんとなくX68kの電源ユニットの中に収まりそうだが…
X68kの電源ユニットの寸法を測り、PLS180のDC-DCコンバータと重ね合わせてみる。

水色の枠がPLS180だが…あらー見事にはみ出てますよ!残念!(>_<)
というワケで、この時点で電源ユニットの中への搭載は断念。

え?DCファンを削れって?いやー発熱箇所が増えるのに自然対流に任せるってのは危ないっしょ。
まあそれでも入らないが…

次に、電源ユニットを除去した空きスペースへの搭載を考える。

DCファンは削れない、上図の上方向にはHDD搭載エリアがあるのでDC-DCコンバータの配置角度は
変えられない。右上方向にはFDDユニットがあり、上図のままではぶつかってしまう。

…DCファンを薄くするかw 6cm角のDCファンは通常25mmだが、10mmにしてみる。

これなら何とかなりそうw あ、赤い部分に謎の基板が出現しているが、このスペースには電源ON/OFF
の論理反転回路+配線中継(満開製MK-CC011相当)や、DCファンのコネクタ、IDE-HDDの為の電源
コネクタ等が配置できそう。

●更に妄想する

DC-DCコンバータ基板と上記の赤色の基板を乗せる鉄板(電源ケース)を設計してみた。
更に、赤色部の基板(ATX-X68k変換基板)も設計してみる。こんな感じ。

うーむ、これは…図より現物写真の方が分かりやすいような?
試作品が入荷したら差し替えよう…って発注してるのかよw

さて。試作発注していた赤色部の基板(ATX-X68k変換基板)が入荷した。(2006/07/28)
中央の黄色いのは輪ゴムである。輪ゴムも一緒に真空パックするなっつーの(^^;

テスタで導通・短絡チェックを行い、早速組み立ててみる(ぉ
…とりあえず、X68kの電源ユニットからケーブルを移植すれば完成、という状態まで組み立てた。

PLS180と組み合わせてみる。

M2-ATXとの組み合わせ。

●PLS180を繋いで火入れ〜

早速、PLS180に繋いで出力電圧を確認してみる。負荷が無い状態なので、とりあえずDCファンだけ繋いだ。

出力電圧 実測電圧(テスタにて)
+5V +4.99V
+12V +12.00V
−12V −12.09V
+5VSB(待機電源) +4.99V

少々高めに出るかと思ったが、殆どズレていない。
実際にX68kを繋いで、電圧変動がどの程度ドロップするのか興味深いところである。

ついでに、X68kのPC端子からのON/OFF機能チェックも実施。正常に機能する事を確認した。

●今後の予定(2006/07/30)

ここから先は、現在発注している電源ケースが入荷してから試したいと思う。
遅くとも2006/08/12までには入荷する予定。

組み込み予定のX68kは、現在冬眠中のACE。電源リフレッシュしてないので丁度良い。
…あ゛。こやつ、FDD1が死んでるんだった。ついでに直すか?(汗)


●電源ケース入荷(2006/08/05)

まずは指定寸法通りになっているかチェックする為、基板を組み込んでみる。

基板、ファンの取付寸法OK。ACEに組み込んでみる。

おぉぉぉぉ!キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!! ⊂⌒~⊃。Д。)⊃
これは凄い。写真ではイマイチ分かりずらいが、X68k側の位置合わせダボが寸分違わず嵌合!
この板金加工メーカ、なかなか良い仕事しますな。スバラシイ!(^_^)

横から見る。端面もぴったり。今のところ、加工状態は問題ない。
まだACEの電源ケーブルを移植していないので、電源基板を無理やり外に出してカバーを閉めてみる。

ぬぅ。「AC100V」と書かれたすぐ上のカバー固定穴…あぁぁぁ、1mmほどズレてるぅぅぅ(T_T)
慌てて図面を確認。指定寸法通り。メーカは悪くない。
なんてこったい、採寸ミスであるorz

それともう1つ…ファンの上のカバー固定穴…取付穴を付けるのを完全に忘れてた(爆)
まぁ、普段からうかつで抜けの多い私が、この程度のミスで済んだのはマシというべきですなw

以上、電源ケースの受入検査・構造確認(第一回)完了。


●PLS180性能評価

X68kの電源ケーブルを変換基板に移植し、PLS180の性能を測定してみる。
測定に使用したACEの構成は以下の通り。
────────────────────────────────────
・標準キーボード・標準マウス・ジョイパッド(Joycard SuperX)1本を接続

・メモリ内蔵1MB増設済

・拡張スロットには満開のMach2pとNereidを装備
 ネレイドのメモリでフルメモリ(12MB)に拡張、Mach2pのSIMMスロットは使用せず

・ソフトは、X68kの機能をまんべんなく使用するよう、スペースハリアーを選択
 ゲームしながら測定は辛いので無敵改造(ぉ
 内蔵スピーカを鳴らし、ボリュームは真ん中にセット
────────────────────────────────────

また、測定機器は以下の通り。
────────────────────────────────────
・入力電力:ワットチェッカ 2000MS1(計測技術研究所)
・出力電力:PCオシロスコープ+カレントプローブ(Tektronix A622相当品)
────────────────────────────────────

まずは出力電力を確認する。出力電圧はあまり差がないと思われるので定格値とし、出力電流
の測定結果から算出した各電圧の電力データの合計を求めて基礎データとする。

電圧 +5V +12V −12V +5V(Vcc2) FAN(+12V) 合計電力
実測電流 5.6A 0.2A ※1 0.05A ※2 0.05A ※2 0.1A
電力 28W 2.4W 0.6W 0.25W 1.2W 32.45W

※1 +12VはFDDアクセス時ピーク1.0Aとか行くが、通常時の電流とした。
※2 −12VとVcc2は電流プローブの測定下限値であり、正確ではない。

次にPLS180との比較のため、純正電源の性能を測定してみる。

稼動時 待機時
入力電力 変換効率 入力電流 入力電力
42W 77.3% 40mA 1W

効率は割と頑張ってる感じ。ちなみに、ACEの消費電力は底面記載値で定格40W、最大81W
なので、ほぼ定格での動作という事になる。

いよいよPLS180に換えてみる。果たして結果は…

稼動時 待機時
入力電力 変換効率 入力電流 入力電力
38W 85.4% 50mA 2W

おぉ!純正より消費電力が下がっている!180Wという電源容量、力率改善回路内蔵という事を
考慮すると、低負荷域なのに素晴らしく高効率な電源である。

待機時の消費もほぼ同等であり、これはX68kに繋ぐにはお勧めの電源と言えそうである。


●突入電流について

電源を投入した時、各部の電解コンデンサ等に一気に充電電流が流れる。これを突入電流という。
コンデンサに急速にチャージした場合の問題点はこのあたりを参照して欲しいが、通常、電源投入
などの単発では発熱エネルギが微小なので問題にならない。但し、これが頻繁に繰り返された場合
はコンデンサの寿命に影響を与える。

という事で、念のため突入電流も測定しておく。まずは5Vラインから。
純正電源は電圧をプローブで触れるのが難しいので省略している。

       <純正電源、5V、100ms/div、1A/div>

最初のヒゲ状のものが突入電流である。時間軸を拡大してみる。

       <純正電源、5V、5ms/div、1A/div>

立ち上げ時間、約15ms、突入電流ピーク約6.4A、というのが読み取れる。スイッチング電源の立ち
上がり時間が早いと突入電流も当然増えるが、機体のばらつきがどの程度なのかは不明である。
続いて12Vライン。

       <純正電源、12V、5ms/div、1A/div>

立ち上げ時間、約10ms、突入電流ピーク約2.3A。3端子レギュレータにより程よく制限されている。

続いてPLS180接続時。まずは5V。今度は電圧も併せて測定している。
上の桃色の線が電圧、下の青色の線が電流である。

  <PLS180、5V、100ms/div、青:5A/div、桃:2V/div>

純正よりも遥かに立ち上げ時間が早く、そのせいで突入電流が増えている。
時間軸を拡大してみる。

  <PLS180、5V、500μs/div、青:5A/div、桃:2V/div>

立ち上げ時間、わずか1.5ms!そのせいで突入電流ピークは約18Aまで上昇している。
とはいえ純正の3倍程度の増加であり、時間も短いことから問題は無さそう。

続いて12Vライン。

  <PLS180、12V、2ms/div、青:5A/div、桃:5V/div>

何故か2段立ち上げになってる…おそらく、最初の突入でPLS180側の電流リミッタが作動し、
解除後に2段目の立ち上げになったものと思われる。各々の時間軸を拡大してみる。

  <PLS180、12V、200μs/div、青:5A/div、桃:5V/div>

  <PLS180、12V、200μs/div、青:5A/div、桃:5V/div>

電流波形が丁度20Aのところで切れているが、PCオシロの入力限界を超えてクランプされて
しまったのであろう。ピークが分からないが、40Aくらいは行ってそうな勢いである。
立ち上げ時間は各々600μsくらいだろうか。

コンデンサへの突入電流という意味では、短時間なので発熱エネルギは小さく問題ないが、
2段立ち上げは、中途半端な電圧の 印加時間が長くなるので宜しくない。
立ち上げ時に、PLS180の保護が働かない程度に電流制限する回路は必要と思われる。

以上より、突入電流そのものはPLS180でも問題ないが、12Vは2段立ち上げになってしまっ
ており、もしかしたら5Vも同様になる可能性はあるので、双方に電流制限回路を設けること
にする。


●基板再設計

以上の検討結果より、ATX-X68k変換基板を再設計する。
今まで単に直結だった+5V,+12Vラインにショート保護回路、突入電流緩和回路を入れる。

 回路図

まだ時間関連の定数が暫定だが、この回路図にて基板設計を進める。

※基板アセンブリ、ケーブルアセンブリ、販売時、の、どのフェーズでも効率の良いと思われる
 方法を考えた結果、自分的には変換基板の電源出力はボードインではなくコネクタが良いと
 思われた為、そのように回路図を変更。併せて各機種用の中継ケーブル接続図を追加。
 (2007/02/07)

以降、工事中です…


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